壁に穴が
夕方、会社のお手洗いに入ったら、床に近いところの壁に小さく丸い穴が開いていた。
お掃除の人が道具をぶつけたのか、誰かが傘の先ででも抉ってしまったのか、それともヒールでガツンとやったのか。いや、それなりに厚みのある壁だ、ヒールが負ける。
けど、なんとなく想像した。
どうにも飲み込みきれなかった怒りを、ここで発散させるしかなかった人がいるのかもしれない。
「我々はまだ人生の青二才だ、
がまんのならない一秒間のために
元気を出せ」(小熊秀雄「人生の青二才」)
青二才と言われる年齢をすぎてもがまんのならない一秒間はいくらでもある。
けれど、いつのころからか、がまんのならない一秒間を歯を食いしばって我慢することはなくなった、年相応に開き直って、言える時は言ってしまうようになった。
それはいいことなのか、悪いことなのか。
開き直ることで怠けているだけではないのか。努力から逃げているだけではないのか。
なにをどこまで飲み込むべきなのか、
どこからなら吐き出していいのか、
ほんとうはこの歳になってもわからない。
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