できたこと、できなかったこと。
たしか今年の目標は「自分の領土を広げること」だった。
夏休みのロシア旅行で距離を稼ぎすぎた反動か、秋以降はどこに出かける気にもなにをする気にもならないまま時間が過ぎて、気がついたら年末が目の前に迫っていた。
で、見に行こうと思っていた展覧会の会期もすぐそこに迫っていた。
ペテルブルクの国立ロシア美術館から、アイヴァゾフスキーの海の絵が来ている。
見逃したくはない。
が、当の展覧会が開かれている美術館は八王子にある。
八王子は遠い。
自宅からだとまず溝の口に出て南武線に乗り換えて立川まで、立川で中央線に乗り換えて八王子に着いたら、今度はそこからさらにバス… となるともう、心理的に遠い。
が。
モスクワを旅行していた時は途中で風邪をひいたこともあって、せっかく本場にいるのに美術館にまで行く余裕がなかった。
というか、モスクワには行けたのに八王子に行けないなどという話があるだろうか。
そんなわけで昨日は八王子まで出かけてきた。
遠いには遠かったけど、やはり行ってよかった。
この展覧会の目玉ともいうべき「第九の怒濤」。
巨大な画面中央でうねる翡翠色の大波。
白く砕け散る波頭。
そして、淡い鴇色の空にさす陽の光。
目を、心を奪われてしまう。
アイヴァゾフスキーだけでなく、シーシュキンの絵も来ていた。アイヴァゾフスキーが海の画家なら、シーシュキンは森の画家。彼の描くロシアの森はいつまで見ていても飽きることがない。
思うに自分は、できたことよりも、できなかったことのほうをより大きく重く感じ取ってしまうのかもしれない。
たしかにこの一年、できなかったことは多い。今年だけではない、毎年毎年やれなかったことが積み重なって、それなのに人生はもはや残りの時間を意識しなくてはいけないところに差し掛かっている。むやみな不安と焦りが心を占めるばかりだ。
でも。
落ち着いて考えてみれば、なにもできなかったわけではなく、少しずつでも、やりたかったことはやっている。
新しい楽器を習い始めた。
コンサートに行った。
勉強を再開した。
ロシアに行った。
ほら。
ちゃんとなにがしかはしている。
後ろを向いてため息をつくのではなく。
できれば晴れ晴れと前を向いていたい。
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