春の庭
去年の今ごろ、コデマリとエニシダの鉢植えを買った。
その時、お花屋さんに「一年くらいしたら植え替えしてくださいね」と言われていたのに、一年もしないうちにどちらの鉢もすっかり葉を落とし、茶色く立ち枯れた姿になってしまった。
植え替えどころか、枯らしてしまった。
それでも鉢を処分する決心がつかなくて、ベランダに出るたびに気が重くなりながらも、水やりだけを続けていた。
ほんとうに枯れてしまったのかな。
枯らしてしまったのかな。
そう思って、枝を一本、切ってみた。
そうしたら、中から瑞々しい緑が覗いた。
生きてた。
よかった、まだ生きてる。
そんなふうにほっとしたのは先週のこと。
ひとまわり大きい鉢と土を買い込み、植え替えの準備をしていざベランダに出てみると、枯れたとばかり思っていたコデマリの枝のあちこちにちいさな芽が出ているのに気づいて、泣きたくなった。
よかった。
ほんとうに、まだ生きていた。
茶色く立ち枯れた姿の陰で確実に季節はめぐり、命の春がまたやってくる。
そしてきっと自分にも。
生きているかぎりまた季節はめぐるのだと。
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