新しい地図
この街に引っ越して来る前、どこに住もうか迷っていたころ、地図を買った。
出不精だったこともあって、東京のことは大学の近辺や勤め先の近所以外はほとんど知らなかった。
引っ越してきてからは、出かけるときにはたいてい、地図を持って出かけた。帰ってくると地図を開いて、歩いた道を橙色の蛍光ペンで塗りつぶした。
橙色の道がだんだんと増えていくにつれて、なんだか自分の領土が増えたような、そんな気がした。
地図を持たずに出かけるようになったのはいつ頃だったろう。
出かける場所がだいたい決まってきて、いつのまにか新しい景色への興味を失っていた。
ここに来てから今年で10年。
また新しい地図を買った。
東京は広い。
とても歩ききれないほどに。
だから、見に行こう。
いつもの景色の一歩外にはなにがあるのか。
まだ見ていない景色を、街を、人を。
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2018.01.07 02:08
2018.01.06 17:42