うつろう日々
せわしく過ごしているうちに、いつのまにか
10月になっていた。日々が駆けてゆく速度が速すぎて、この半年ちょっとのうちに起きたあれこれが、自分の中でもう現実味を失っている。
ひとりで部屋にいると煮詰まりそうなので、外に出てみた。日差しはまだ強くても、ゆるやかに吹き抜ける風が心地よく身体を冷やしていく。そういえば先週はほんのりと金木犀の香りをかいだ。もう金木犀が?と周りを見回してみたら、小さな橙色の花をつけた木がたしかにそこに立っていた。あの香りを感じるようになるとその分空気が冷たくなって、もう秋なのだとものさびしい気分になる。
近所の公園にたどり着いて、ベンチに腰掛けて本を開く。
広い芝生のところどころにはちいさなテントが張られて、ピクニック気分を楽しんでいる人たちがいる。そのひとつから、静かなギターの曲が流れて来る。
抹茶色に淀んだ池に大きく枝をのばした桜から、最後の蝉の声がする。
薄い灰色の雲間からさっと強い日が差し込む。
この人生はいつまで。
茫漠としてわからないその長さに倦むこともある。何もなかったことにしたいと、投げ出したくもなる。
この人生はおそらく、というよりもほぼ凡百のそれで、死んでしまえばそこまでの忘れ去られ消えていくちいさな物語だ。
けれど。
それだからこそ。
人生の軽重も長短もわからないからこそ真剣に生きたい。
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