ほしいものは

いつもなんの脈絡もなく、突然ひと言メールを送ってくる同僚が、今日は「10億あったらどうしますか? 生活費は十分ある前提で」と聞いてきた。
10億。
現実感のない金額にかえってなにも思い浮かばず、月並みに、もう何年も海外に行っていないから旅行してきたいな、やっぱりロシアとかウクライナ、中央アジアあたり。それと、断絶しそうな親の実家を土地ごと買い入れたい。あとはお稽古の道具がほしいかも、と答えてみたけれど。
いつのころからか、自分がほしいものはたとえば、和漢の典籍や詩文に通暁していることだったり、ロシア語を自在に操れるようになることだったり、きれいな筆文字を書くことだったり、潔い音で楽器を弾けるようになることだったり、要するにお金を出したところで手に入らないものなのだった。
蒔絵の箱にでもこの夢が詰まっていて、蓋を開けたらぱっと願いが叶うんだといいのに。
… いや、違うか。
時間が全然ないとか、なんどやってもだめだとか、愚痴をたれつつ言い訳しつつ、少しずつ自分のものにしていくことこそが楽しいのだ。
道は長い。
自分は、どのくらい手に入れられるだろう。

陽は中天を過ぎて 2nd season

第二人生。 ここから歩いていこう、 鮮やかな夕映えのなかを。 大丈夫、自分はまだ生きている。

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