交差点にて

いつのまにか隣が引っ越し、そのまた隣も気がついたら空き部屋になっていて、年末を前にこの階の住人は私ともうひとりだけになった。
とはいえ、これまで誰とも挨拶を交わしたことはなく、姿も見たことがなかった。かろうじて、お隣さんの背の高い後ろ姿をなんどか見かけたことがあるだけだ。
同じ敷地に暮らしていてさえ、縁のない人とは人生はかすりもしないのだと思うと、同じ職場で干支ひと回り分もの時を共有してきた仲間というのは、特別な縁があるもののように感じる。
そしてそんな仲間のひとりが今日、定年で退職していった。気丈なひとが、最後には涙を見せて、こちらまで目の奥が熱くなった。
会社にいれば、苦しいとかしんどいとかクサクサするとか、そんなことがほとんどだろう。人とのやりとりで面白くない気分になることだって度々ある。
けれど、なんの縁でか人生のひと時をともにしているのだから、できれば気持ちよく過ごしたい。誰のことも悪く言わず悪く思わず、柔らかい態度で、声で、人に接することができれば。
顔を施し、声を施し、心を施す。
なかなかうまくできない時も多いけど、せめて心がけることだけは忘れないようにしたい。

陽は中天を過ぎて 2nd season

第二人生。 ここから歩いていこう、 鮮やかな夕映えのなかを。 大丈夫、自分はまだ生きている。

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