心を弾ませる
今日は月に一度のお稽古で、ここ最近ではめったにないことなのだけれど、席入りや床の拝見をはじめとした一連の作法を教えていただいた。
作法もさることながら、亭主とお正客の間で取り交わされる挨拶が興味深かった。必要以上に自分を卑下せず、相手を立て、その場の雰囲気を汲み取って会話をしていく。それは職場でのだいぶテンプレート化されたお決まりの会話とは頭と気の遣いどころが違う。
先生がおっしゃるには、作法は楽譜であって、それを立体的に立ち上がらせるのが座の芸というもの。連衆ひとりひとりの心が弾んでないと楽譜は生きてこない、と。
深く納得できるものがあった。
いくら楽譜をただしく弾けても、そこに躍動する心がなければ心づくしのもてなしを味わうことも、亭主とお正客との間の当意即妙の受け応えを楽しむこともできない。
こういう習い事は、最初のうちは手順を覚えるのに精一杯で、何年か経って慣れてくると今度はその手順を滞りなく間違いなく行うことに気を取られてしまい、ともするとひどく表面的な、ただの約束事の実行になってしまう。
楽譜をきちんと読みつつ、それでいながら心をどれだけやわらかく遊ばせられるか。
それはぜいたくな世界だ。
私はどこまでいけるだろう。
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