幸せになれ!

学祭では面白い出し物に出くわすこともあって、それも楽しみのひとつ。

キャンパスの片隅にゲルが建っているので、モンゴル料理の店かと思って近寄ってみたら、中央アジアの音楽を演奏してくれるのだという。(ということは、ゲルではなくユルトと呼ぶのが正しいのか)

靴を脱いで中に入ると、ちょうど演奏が始まるところだった。ユルトの奥であぐらをかいた青年がマンドリンのような形をした楽器を構えると、柔らかく軽やかな弦の音が流れてきた。
それはカザフスタンのドンブラという二弦の楽器だった。
弦を押さえる細い指の動きがしなやかでつい見とれてしまった。撥は使わず、右手で弦を弾いて音を出す。その、手のひらひらと上下する様もまたきれいだ。

初めて見る楽器は、自分がお三絃をやっていることもあって比較の対象として興味深くて、楽器に触りたい人は触ってもいいですよ、という言葉に甘えて楽器をもたせてもらった。
おどろくほど軽い。
軽すぎて、腿の上で位置を決められず、胴がふらふらしてしまう。
そして二本の弦はどちらも同じ太さ。糸の巻き具合で調弦を工夫しているらしい。現代ではナイロンの糸を使っているけれど、昔はいかにも遊牧民の楽器らしく、羊の腸を糸に仕立てたものを張っていたとか。
中央アジア5カ国の国旗やタペストリーで飾ったユルトの中にはドンブラによく似たウズベキスタンのドゥタールも置いてあって、こちらも触らせてもらうことができた。
やはり軽い。が、弦が違うのか少しばかり重みのある音がする。
(黒いほうがドゥタール、手前の白いほうがドンブラ)
(糸巻きの部分。どちらの楽器も簡素な感じ)

楽器の見た目は似ていても民族のルーツが違うので、カザフとウズベクとでは音楽もだいぶ違うのだという。ペルシャの影響を強く受けたウズベキスタンの音楽は残念ながら聞いてくることはできなかったけれど、遠い世界を垣間見られただけでもよかった。

この模擬店では楽器と一緒に記念撮影をしてくれる。しかもなにか好きな言葉を現地の言語で書き添えてくれるサービス付き。
よい思い出になりそうだし、せっかくなので、ドンブラとドゥタールのそれぞれで撮ってもらった。
なにを書いてもらおうか、とても迷ったけれど、基本的にネガティヴモードの自分を励ますつもりでカザフ語とウズベク語で「幸せになれ」と書いてもらった。
そう、人生の時間が流れゆき、いろいろと思わしくないことが積み重なっても。
どうか幸せになれ。

陽は中天を過ぎて 2nd season

第二人生。 ここから歩いていこう、 鮮やかな夕映えのなかを。 大丈夫、自分はまだ生きている。

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