点景

明日ってほんとうに雪が降るのかな。
たしかに空気は冷え冷えとして、手袋なしではとても歩けない。今日でさえこんななのに、雪になったらどれほど冷たいことだろう。
手袋をして、それでも指先がかじかむようで、ぎゅっと握りこぶしを作って歩いていた
夕方の駅で、なにやらぐずっている女の子がいるのに気がついた。はやく暖かい電車の中に入りたいだろうに、吹きさらしのプラットホームの真ん中でお母さんはその子と目線を合わせるようにしゃがみ込んで、涙でよく聞き取れない言葉を聞いてあげている。
通り過ぎざま、聞くともなしに女の子の言葉が耳に入ってきた。
「アイシュ…」
んん? 
まさかアイス、のことかな。
お母さんも「ええっ、アイス?」とびっくりした声で聞き返す。
「アイシュ! 食べる!」
この寒さでか。
すごいな、子どもって。外気温なんかおかまいなしだ。真冬にアイスなんか食べるのはロシア人くらいかと思っていたけれど。
お母さんは「じゃああとで買って帰ろうね」と立ち上がり、女の子の手を引いた。が、女の子は今すぐ食べたいらしく、引かれた手をぶんぶんと振って抵抗する。お母さんは「食べよう食べよう、アイスを食べよう」となにかの替え歌を歌いながらずんずん歩いて、先頭のほうの車両に行ってしまった。
はたしてアイスはどうなるんだろう。
子どもの気をうまく逸らしたお母さんの方便が勝つのか、それとも女の子が粘り勝つのか。思わずちいさく笑った。

陽は中天を過ぎて 2nd season

第二人生。 ここから歩いていこう、 鮮やかな夕映えのなかを。 大丈夫、自分はまだ生きている。

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