東洋の思い出

「ドイツ貴族の明治宮廷記」オットマール・フォン・モール(金森誠也 訳)

明治のお雇い外国人のことを誤解していたかもしれない。東洋の後進国を指導してやってるんだ、という軽侮の気持ちを隠し持ちながら勤めているものとばかり思っていたのだ。
けれどこの本を読めば、モールという人がそのような差別的感情とは無縁の、実に公平な人であることがよくわかる。
日本の文化に深い興味を抱いていること、むやみな西欧化を好ましく思っていないことを文章の端々から感じ取ることができ、細かい観察と日本的なものへの好意的な視線には、日本人が書いているのではないかと時々錯覚するほどだ。日本史の知識も並大抵ではない。
日本政府に招聘されて宮中で働いていたのはたったの2年に過ぎなかったけれど、この間、仕事の傍ら箱根に行き、京都に行き、日光に行き、富士山にまで登っている。日本でのもろもろの印象と経験はその後の生涯を大いに豊かにするものであった、という述懐で本書は終わる。あの時代にこんな遠い国まで来て、一生心に残るよい思い出を持ち帰ってもらえたということが、日本人として嬉しい気がする。

ところで文中驚いたことがある。
モールが来日した明治二十年代は、夏になると、官庁はふた月ほど休みになったというのだ。どうせ暑くて仕事にならないから、というのがその理由らしいけれど、なんとまあのんびりした時代だったことか。
今だってニッパチとか言って8月はわりあい暇なんだし、みんなの休みが重なった週なんか開店休業同然なんだから、いっそのこと潔くまるまるひと月休みにしてみたらどうなんだろう。

陽は中天を過ぎて 2nd season

第二人生。 ここから歩いていこう、 鮮やかな夕映えのなかを。 大丈夫、自分はまだ生きている。

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