またひとつビルが
大手町の旧興銀本店ビルもとうとう解体されてしまうというので、お稽古の帰りに寄ってみた。建てられたのはもう40年も前のことで、近年建替えが進む大手町界隈での数少ない生き残りだ。
艶々とした赤茶色の外壁、窓を設けるために一階から最上階まで細く入ったスリット。少し離れたところから眺めると、このスリットが桟のようにも見えて美しい。
北側の一角には下層階がなく、船の舳先みたいだと、通りかかるたびに思っていた。舳先の下には池があって、水面を覆い隠すほどたくさんの緑に溢れて、かつては四角四面なビルばかりが立ち並んでいたこの辺りでは珍しい風景だった。
巨艦を思わせる独特な外観が仲通りの並木と相まってどことなく日本離れした雰囲気を醸し出しているせいか、ファッション誌の撮影に使われたことも度々ある。
毎日のようにこのビルを横目に通勤していたけれど、なくなってしまうとなると心が残る。
が、朝は人目も気になるし、帰りは闇に沈んだ後だし、そんなこんなで解体と知ってからもなかなか写真を撮る機会がなかった。
しかし今日は週末、折しも小雨がぱらついている。ただでさえ人の少なくなる土日に天候も今ひとつとあって、通りはがらんとしていた。
あいにくすでに工事が始まり、舳先の下の池は埋め立てられてプレハブが建ってしまっていた。仲通り側も工事用の車両が停まっていたりして絵づらがよくないけれど、今日を逃したらもう解体がどんどん進むばかりだろう。これを名残に。
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